クマノミの卵ハッチアウト

土曜の朝、楽しみにしていたクマノミの卵を見に行くと、卵の中には小さなこどもたちが今にも飛び出しそうに、眼を上にして並んでいた。はじめはオレンジ色のイクラみたいだった卵が今は金色にキラキラ輝いている。

ハッチアウト(卵のふ化)は今夜か明日の夜だろうな。

私はまだ見たことないので、ハッチの様子、みてみたいな。

こどもがでてくるのって、目で見えるんだろうか、感動するっていうけどほんとかな、なんでだろう。魚の卵が孵化するのなんかあたりまえじゃん。

クマノミ家族の住所は大瀬崎湾内、ゴロタ下りる途中のイソギンチャクそば。

海は先日の豪雨で土砂が流入し、とても濁っていて生き物はだいぶ減っている。

日曜の夜、卵がまだあったら見に行ってみよう。

日曜の夜、私はクマノミ家族のところへ行ってみた。

予想はしていたけど、海の中の濁りはひどかった。まだ卵あるかな、こんな日でもハッチするんだろうか。クマノミ家の住所はとても分かりやすいところなのに、慣れている私でも迷ってしまい、たどり着くのにいつもよりかなり時間がかかってしまった

私がついた時にはハッチアウトはすでに始まっていた!

親がこどもたちをがんばれがんばれって応援するみたいにひれをパタパタさせてハッチを促していた。あっというまにハッチアウトは進み、ほとんどの卵は空っぽになってしまった。

ふと見ると少しだけ、卵が残っているところがあった。

たった3つの卵に残った子どもたち。

よそ見してたのか、臆病なのか、のんびり屋さんなのかも。


親はひれであおぐよりも顔を岩にこすりつけるな動きにかわったようだ。ハッチが終わって、卵の殻のあとかたづけかもしれない。

さっきの残ってる3つの卵のこどもたちに気づいているだろうか。


あれ、みんなもう旅立っちゃったみたい。ぼくらだけになっちゃった。

あ、あぶない、イソギンチャクさんの触手!

触手の毒でいつも敵から守ってくれるイソギンチャクさんも、ぼくらはまだちいさいから毒に耐えられないよ。

パパもママもヒレであおがないし、ぼくらの事気づかないのかな。

みんないなくなっちゃった。

はやく出たほうがいいんだろうけど

こわいよ、

できないよ。

パパ、ママ、ぼくらの事、わすれたの?


おいおい、わすれるわけないだろ。


あっ、パパだ。

ぼくらのことわすれちゃったんじゃないんだね。


あなたたち、のんびりしすぎですよ。


あ、ママごめんなさい。

あのね、ママの尾っぽは白くてとってもきれいなの。

おまえたち、イソギンチャクさんの触手にさわらなかったか?イソギンチャクさんにいままで守ってくれてありがとうございましたって言うんだぞ。


はい、パパ。

あのね、パパの尾っぽは黄色くて、かっこいいの。触手の毒もへっちゃらで、いつもぼくらを守ってくれるの。

おまえたち、いつまでおしゃべりしているのかな?


えーっと、そろそろ行かなきゃって思ってるんだけど、ちょっと考え事してたの。

だって、こわいこといっぱいあるかもしれないでしょ。パパもママもいてくれないし、だから、それに、えーっと、えーっと。

うんうん、おまえたちもすっかりおおきくなった。えーっと、それからなんだい?


…パパ、もういいよ、だいじょうぶだよ。ちいさい子みたいにするのやめてよ。くすぐったいよ。

もう、だいじょうぶだもん。

ぼくらはみんなパパとママのこどもだ!

とても濁っていて泥も積もる中、大変な海況だったけど、生き物はたくましく生きていくし、こどもたちは成長していた。

ママ・クマノミのお腹はふっくらして、次のこどもたちが控えている。


元気な子も、ゆっくりな子も、みんな無事に旅立ったみたい。


めでたし、めでたし。



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